名古屋市熱田区の白鳥庭園の記事で、庭の流れが木曽川に、池が伊勢湾に見立てられていることを紹介しました。
その木曽川は、名古屋に住む人にとって、庭の中だけの川ではありません。
毎日蛇口をひねって出てくる水も、木曽川から届いています。
犬山市と各務原市の間を流れる木曽川の犬山頭首工とライン大橋(2022年1月撮影)。写真:先従隗始(Wikimedia Commons)/CC0。
名古屋の水は、木曽川から
名古屋市の水道は、3つの浄水場すべてで木曽川の水を使っています。
川の水をくみ上げる取水場は、犬山市の犬山取水場と、そこから約30km下流、一宮市の朝日取水場の2か所です。
犬山で取った水は春日井浄水場と鍋屋上野浄水場へ、朝日で取った水は大治浄水場へ送られます。
どちらの取水場も名古屋市の外にあります。
蛇口の水は、市の外を流れる川から来ているわけです。
この水は名古屋市内だけでなく、大治町など市外の一部にも届いていて、給水人口は約246万人です(2024年度)。
3つの浄水場
川の水は浄水場できれいにされてから、家庭に届きます。
| 浄水場 |
場所・始まり・1日の給水能力 |
| 鍋屋上野浄水場 |
名古屋市千種区。1914年(大正3年)9月に通水した、市内で最初の浄水場。29万m³ |
| 大治浄水場 |
海部郡大治町。1946年(昭和21年)3月に給水開始。54.4万m³ |
| 春日井浄水場 |
春日井市。1969年(昭和44年)4月に通水。59万m³(3つのうち最大) |
名古屋の水道は、鍋屋上野浄水場とともに1914年に給水を始め、2014年に100周年を迎えました。
鍋屋上野浄水場の旧第一ポンプ所は、1985年に「近代水道百選」に選ばれ、2012年に名古屋市の指定有形文化財になっています。
川の水が、飲める水になるまで
浄水場に着いた川の水は、まず「着水井」という池に入り、水の量や水位が整えられます。
次の沈でん池では、薬品を加えて水の中の細かいにごりを「フロック」というかたまりにし、底に沈めます。
そのあと塩素剤を入れて消毒し、砂の層を通す「ろ過池」で、沈でん池で取りきれなかった細かいにごりをこし取ります。
きれいになった水は浄水場の配水池にためられ、ポンプで市内の配水場へ送られます。
配水場から先は、地下の水道管を通って各家庭の蛇口まで届きます。
名古屋市の水道管をすべてつなぐと約8,400kmあり、これは名古屋からサンフランシスコまでの距離に当たるそうです。
ここまでの流れは、薬品で沈めてから砂の層で手早くこす「急速ろ過」という方式で、大治と春日井の浄水場はこの方式です。
鍋屋上野浄水場には急速ろ過に加えて、時間をかけて砂の層でゆっくりこす「緩速ろ過」の設備もあり、1日14万m³ほどをこの方式でつくっています。
毎日続く水質の見張り
水は、浄水場を出たあとも見張られています。
給水区域の25か所に水質の連続監視装置があり、色、にごり、消毒の効き目が残っているかの3項目を、24時間休まず測っています。
国の水質基準の52項目は、配水の系統ごとに選んだ20か所の蛇口で検査しています。
水源の木曽川でも、流域の12地点で水を調べています。
検査はほとんどを上下水道局が自分で行っていて、2006年には検査の信頼性を証明する「水道GLP」の認定を受けています。
あっさり、まろやかな軟水
名古屋市上下水道局によると、木曽川の水は水量が多く水質もよい、硬度の低い軟水です。
主な大都市の水道水の中でも硬度が特に低く、「あっさりとしてまろやかな味」と紹介されています。
名古屋市は1979年、全国に先がけて「うまい水研究会」をつくりました。
2024年度のアンケートでは、回答した人の約8割が名古屋の水道水を「おいしい」と答えています。
遠くのダムも水を支えている
始まった頃の名古屋の水道は、木曽川の自然な流れだけで水をまかなっていました。
今は、木曽川水系の岩屋ダム(岐阜県下呂市)や味噌川ダム(長野県木祖村)なども水源を支えています。
長野県木祖村の味噌川ダム(2022年9月撮影)。写真:経済特区(Wikimedia Commons)/CC BY-SA 4.0。
ひどい渇水や水質の急な変化に備えて、木曽川だけに頼らず、長良川や揖斐川にも水源が確保されています。
揖斐川側の水源は、徳山ダム(岐阜県揖斐川町)です。
断水のない、なごやの水道
名古屋市上下水道局は、給水を始めてからの歩みを「断水のないなごやの水道」と表しています。
ただ、それは一度も危ない時がなかったという意味ではありません。
1994年(平成6年)の夏、木曽川水系はひどい渇水に見舞われました。
川から取る水の制限は6月1日から11月14日まで166日間続き、8月上旬には岩屋ダムなど3つのダムで、水道や工業・農業に使うためにためていた水が底をつきました。
名古屋市は、節水の呼びかけを強め、たくさん水を使う事業所などへの供給を絞り、水道管の水圧を下げて、時間を区切って水を止める「時間断水」をせずに乗り切りました。
それでも、市内の約75,000戸で水の出が悪くなりました。
地震に強い水道管へ
断水を防ぐもう一つの備えが、地震に強い水道管への取り替えです。
厚生労働省のまとめでは、水道の骨組みにあたる「基幹管路」のうち、地震に耐えられる管の割合は、名古屋市が79.9%、全国平均が42.3%です(2022年度末)。
家の近くまで水を配る配水管も、南海トラフ地震に備えた耐震化が66%まで進んでいます(2024年度末)。
毎年およそ100km分の管が、地震に強い管に替えられています。
浄水施設の耐震化率は、2022年度で99.4%です。
もしもの時の水
大きな地震で水道が止まった時のために、市内には水を受け取れる場所が用意されています。
| 種類 |
内容 |
| 応急給水センター |
港区、中川区、千種区(平和公園配水場内)、西区の4か所 |
| 地下式給水栓 |
給水区域内のすべての公立小中学校。地域の人が自分で操作して水を出せる |
| 仮設の給水栓 |
広域避難場所などに、上下水道局の職員や協定を結んだ事業者が設置する |
近くの給水場所は、上下水道局の「災害時に役立つ施設の検索」で、地図や住所から探せます。
家での備えとして、上下水道局は水を1人1日3リットル、3日分で9リットル以上たくわえておくよう勧めています。
名古屋市水の歴史資料館
名古屋の上下水道の歴史や役割は、千種区の「名古屋市水の歴史資料館」で学べます。
地震への備えを紹介する展示もあり、入館は無料です。
名古屋市水の歴史資料館(2025年5月撮影)。写真:Hyppolyte de Saint-Rambert(Wikimedia Commons)/CC BY 4.0。
| 項目 |
内容 |
| 開館時間 |
9時30分〜16時30分 |
| 休館日 |
月曜日(休日の場合は直後の平日)、12月29日〜1月3日 |
| 入館料 |
無料 |
| 所在地 |
名古屋市千種区月ケ丘1-1-44 |
| 交通 |
市バス「月ケ丘」から徒歩約2分、地下鉄東山線「覚王山」駅から徒歩約17分 |
| 駐車場 |
無料(18台) |
詳しくは名古屋市水の歴史資料館の公式案内をご覧ください。
名古屋の街なかを流れる庄内川や堀川、中川運河のことは、次の記事で書くつもりです。
水のありがたさ
私は、ありがたいことに、断水を経験した記憶がありません。
蛇口をひねれば水が出ることを、当たり前のこととして暮らしてきました。
けれど、こうして調べてみると、その当たり前は、ひとりでにそこにあったものではありませんでした。
長野や岐阜の山に降った雨があり、それをためるダムがあり、毎日水を見張る人や、水道管を地震に強いものへ替え続けてきた人たちがいます。
1994年の夏も、そうした人たちの工夫と、みんなの節水で、水が止まらずにすみました。
積み重ねの先に、私の当たり前があります。
その当たり前に、感謝しています。
ほんと、ありがたいことだがね。
※開催日時など、最新情報は主催者の公式案内にてご確認ください。